- September 13, 2006
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67. 【イベントレビュー】 次世代文化フォーラム「アート・テクノロジー・サイエンスの領域を越えて」
以前ここでも告知させていただいた、次世代文化フォーラム「アート・テクノロジー・サイエンスの領域を越えて」のレビューです。まあ、レビューというといささか大げさな心持ちもするので、ささやかな感想だと思ってください。
まず、基盤となっているテーマの要点を整理します。
このフォーラムを主催しているACE JAPANの「知の統合プロジェクト」というものが、そもそもどういった狙いを持っているのかというと、
- 自然科学の知識の中に表象される美の本質を芸術文化活動によって伝えてゆくこと
- これらの活動を通して国際的な科学・技術・芸術の横断的協働ネットワークを広げてゆくこと
- 21世紀人類の肥沃な知的文化基盤を創造してゆくこと
これが彼らの言い分です。
そして、フォーラムの中では、「アートとサイエンス、二つは個別の文化か?相互に関連する一つの文化か?」という題目での基調講演があった。また、それに続くパネルディスカッションでは、下記の4点がテーマとして設定されていました。
- なぜいま、科学・技術・芸術の融合か?
- 芸術創造活動を通して、科学は人類に何を伝えることができるのか?
- 科学的世界像を通して、芸術派何を表現することができるのか?
- 科学・技術・芸術の融合によって育まれる次世代文化とは?
ということなんですが……。
結論から言うと、ちょっと僕はこのフォーラムに多大な期待を抱きすぎていたかもしれないです。もちろん、「こういうイベントを開催することができた」ということ自体は、十分評価に値すると思いますけどね。ただ、せっかくやるんだったら、(大変だろうけど)もうちょっと頑張ってほしかった気がします。
まず、基調講演の演者だったアーサー・ミラーさんが、「ただ連れてきてしゃべらせただけ」という感じになっちゃったのが問題。講演のスタイルは、「通訳なしの英語講演。ただし、英語の原稿とその日本語訳を配布しておく」というもの。この基調講演と、その後のフォーラムの展開がほとんどバラバラな印象になってしまった。「通訳をつける」あるいは「思い切って全編英語のフォーラムにする」というような方法を採って、パネルディスカッションにもミラー先生に加わってもらうぐらいのほうが良かったと思います。
あとは、「それのどこがアートとサイエンスの融合なの?」という話がけっこう多かった。「融合」という言葉の捉え方自体に、まだまだ幅があるんじゃないでしょうか。ほとんどの出席者は「とりあえず今やっている自分の仕事の中から、なんとなく融合っぽいものを紹介します」といった感じで、パネルディスカッションの中でも話が噛みあっていない部分が散見されました。単純に科学技術をアート作品の制作に応用するというぐらいでは、とても「融合」とは呼べない気がするんですけど。もしそのあたりの感覚が共有されていないのであれば、「融合とは何か」というところからガンガン議論してほしかったです。
そういう感じだから、「アートとサイエンスは今はバラバラになっちゃっているけど本来は一つなんですよ ⇒ 融合するといいことがありますよ」という話はそこそこ(不十分ながら)伝わってきたんですが、その間に来るべき「どういう形で融合すればいいのか、融合するために何が必要なのか」という具体的な部分は、ほとんど完全に抜けちゃっていましたね。
唯一、こどもの教育の話が少しあったけれど、これも石井幹子さんが美術教育について、黒川清さんが科学教育について、それぞれ別々にコメントしただけ。じゃあ、双方を融合できる人材を作るには、ただ両方の教育を施せばそれでいいのか?そう単純なものではないでしょう。また、仮にこどもはそれでいいとしても、大人は次代に期待するしかないのか。今自分たちのためにできることはないのか。「次世代文化フォーラム」だから次世代のことでいいんです……なんてことでは、ほとんど冗談みたいですよね。
「知の統合プロジェクト」ということで、せっかく立派な目標を掲げているのだから、それを実現するための具体的な方策について、こういう場所でもっと活発に議論することが必要なのではないでしょうか。すぐに明確な答えは出ないと思いますが、少なくともパネリストの「自己紹介」みたいなものを延々と聞かされるよりは、参加者の満足度も高まるんじゃないかと……えーと、愚考する次第であります。
もちろん、いい話もありましたけどね。中でも、かなりまともに考えさせる内容を聞かせてくれたのは、野依良治さんでしょうか。まあ、わかりませんけどね。本当にちゃんと考えてきてくださったのか、ノーベル賞を受賞されたりして講演慣れしてるからパッと話せちゃうのか、同じ形式でスピーチした小宮山宏さんとの対比でそう見えたのか(小宮山先生の話は、ちょっといくら何でもあんまりじゃないかと……。いろいろ忙しいとは思いますが、頼みますよ、総長)。いずれにしてもさすがでした。
また、パネリストの中でも、黒川先生などはなかなか深いレベルで考えていらっしゃるようでした。「科学技術についてもアートについても、価値観が経済原理に支配されやすくなっている。しかし、科学もアートも本来はもっと純粋なもののはずで、その価値のずれを多くの人が本質的に感じとっているようだ」というような内容の発言をされていて、ちょっと興味をそそられました。できれば、この話題をもっと突き詰めていただきたかったです。
以上、少し辛口の感想になってしまいましたが、引き続き期待と関心を持って、このプロジェクトの動向を見守りたいと思っています。
※ 本文中の引用箇所はすべてフォーラム当日の配布資料によっています。また、出席者の発言内容等については、僕が取ったメモをもとにしたものなので、もし間違いがあればご指摘ください。
※ 関連ブログ(知の統合プロジェクト):
http://blogs.yahoo.co.jp/nifdir/8275660.html
http://consilience.blog70.fc2.com/blog-entry-5.html
![[Blog in Space]](http://www.bloginspace.com/_assets/img/BIS_button2.jpg)