September 2, 2006

65. 科学論文誌の寸法

某君来りて曰く、「なんだかレーザープリンタの調子が変なんです。ちょっと見てください」。(研究室のパソコン周りに関係することは、だいたい僕が担当しているのです)

どれどれ、と原因を探ってみたところ、どうも科学論文誌のオンライン版(PDFファイル)を印刷するときに限って具合が悪い様子。となると、これはプリンタ自体の問題ではなさそう。

PDFファイルを開くソフトウェア(Adobe Reader)の設定をチェックしてみると、「ページサイズに合わせて用紙を選択」というオプションにチェックが入っていました。こうなっているとですね、たとえば「プリンタにはA4サイズの紙が入っているのに、ファイルの内部情報としてのサイズはB5になっている」などというときに、プリンタ側に「違うサイズの紙を出せ」という要求が行ってしまう。このオプションのチェックをはずせば、だいたい自動的にサイズが調整されて、うまく印刷できるのです。

「ほら、これはアメリカの論文誌でしょ?日本やヨーロッパでは紙のサイズはA4が基本だけど、アメリカではレターサイズが使われるからさ。それで少し食い違いが出るんだよ」

僕はそう説明して、某君もそれで納得したようではあったけれど、うーん、果たして本当だろうか。確かに「アメリカでは習慣的にレターサイズやリーガルサイズの紙が用いられる」という話はよく聞くし、それは実際にそうらしい。ちなみに各々の寸法は、

  • A4: 210×297 mm
  • レター: 8.5×11インチ ≒ 215.9×279.4 mm
  • リーガル: 8.5×14インチ ≒ 215.9×355.6 mm

つまり、A4をちょっとだけ太らせて短くしたのがレターで、レターをびよーんと長くしたのがリーガル。まあ、A4とレターに関しては、並べてみないとわからない人もいるぐらいの違いですね。

でもさ、企業や官庁ならいざ知らず、世界中の人が読むことを前提にした論文誌でしょう?いまどき、わざわざアメリカのローカルな基準で作らなくたっていいじゃないですか……(別に作ってもいいけど)。

そこで、モノは試しと、そのPDFファイルの情報を開いてみました。すると……なんと、そこで指定されているサイズは、A4でもレターでもない。横幅はだいたいA4で、縦はレターサイズよりもさら少しだけ短いというものでした。まあ、これも並べなきゃ気づかないようなもんですが。

しかし、こうなるとなんだか気になってしまいます。「この微妙なサイズは何なんだ?」と思った僕は、なじみのある論文誌のオンライン版を片っ端からダウンロードして、サイズ測定を遂行しました(別に暇というわけじゃないんだけど……)。

まず、その辺に置いてあった数種類の論文誌を定規で測って、PDFの指定サイズが現物に一致していることを確認。それから後は、ただひたすらPDFファイルを開いて寸法をチェック。その結果できたのが下のリストです(ジャンルに偏りがあるのは、ただ僕が普段から比較的よく読んでいる論文誌を選んだというだけのことで、他意はありません)。

雑誌名 短辺 (mm) 長辺 (mm)
Brain Research 209.9 279.8
Cell 206.4 276.2
Cerebral Cortex 209.5 276.2
European Journal of Neuroscience 210 276
Glia 209.5 279.4
Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism 209.9 280.1
Journal of Comparative Neurology 209.5 279.4
Journal of Neurophysiology 209.5 276.2
Journal of Neuroscience 206.4 276.2
Journal of Neuroscience Research 215.9 285.7
Lancet 209.9 281.9
Molecular and Cellular Neuroscience 210 280
Nature 210 276
Nature Neuroscience 209.5 276.2
Neurobiology of Disease 210 280
Neuron 206.4 276.2
Neuropathology and Applied Neurobiology 209.9 275.9
NeuroReport 207 276
Neuroscience 209.5 279.4
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) 209.5 276.2
Science 209.5 267.7
Stroke 206.4 276.2

いやぁ、もう、完全にバラバラです。ここに挙げたのはアメリカの雑誌だけではありませんが、「A4ぴったり」とか「レターぴったり」なんてものはないんですね。もちろん、雑誌なんだから好きなサイズで作っていいんだろうけど、規格で用意されているサイズにしたほうが印刷や製本が楽なんじゃなかろうか。コスト的にも。もうほとんどどうでもいい心配だけれど。

でも、こうして全体を見ると、「横はA4程度、縦はレターサイズに近い」というものが多いような気もします。これは「両方の辺を短いほうに合わせて、色々はみだしたりしないように」という気遣いなんでしょうか?

もちろん、同一サイズで作られている雑誌もあります。でも、同一サイズだからといって出版社が同じだとは限らない。ということは、これでもなんらかの規格のようなもの(あるいは習慣的なもの)があるのかもしれません。かと思えば、同じ出版社でも違うサイズのものがある。たとえば、「Nature」と「Nature Neuroscience」なんて、出版社はもちろん同じだし、さらに姉妹紙でもあるのにサイズが違う(まあ、長辺の差は冊子の実物を重ね合わせて比べても全然わかりませんでしたが。ほんの0.2 mmの違いだものね)。

他に気がつく点は、長辺に「276(あるいは276.2)mm」という値が非常に多いということですね。これはA4でもレターでもないけど、何か意味があるのかな……と思って調べてみると、ISO規格に「B5 Extra」というB5の変形版があって、そいつの長辺が276 mmなんですね。まあ、だからなんなんだ、と言われればそれまでですが。

参考になるのが、下記のウェブページ。

Desktop/Office Printer, Business & Imposetter/Large-Format Papers An International Guide
http://home.inter.net/eds/paper/dtpofficepaper.html

いや、でもさすがにそろそろ馬鹿ばかしくなってきたので、この辺で終わりにしておきます。

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