June 18, 2006

54. ストックホルムにて<1> 序章

前回の記事に書いたように、数日前までスウェーデンのストックホルムへ行っていました。短い滞在でしたが、なかなか楽しかったです。

学会での研究発表と言いましたが、種を明かすと、これはいわゆる普通の「学会」とはちょっと違う種類のものでした。どう違っていたかというとですね……。

今からちょうど100年前、1906年のことです。脳内の細胞を詳細に記述したラモン・イ・カハールというスペインの解剖学者が、神経系の構造研究への功績を認められてノーベル生理学・医学賞を受賞しました。実は、今回の学会は、その100周年記念行事として開かれたものだったのです。だから、わざわざストックホルムでやったわけですね。

主な会場は、ストックホルムにあるカロリンスカ研究所ノーベル会館(The Nobel Forum)という場所。人数は少なくて、せいぜい200人か300人といったところでしょう。なんだか偉そうな人たちばかりで(実際に偉いかどうかはまた別の話だけど)、若い研究者や学生は数えるほどしかいない。学会というと、大抵はもうちょっと雑然としたものになるんですが、今回はセレモニー的な性格も備えていたためか、全体として割に落ち着いていましたね。

で、朝から晩までスケジュールがびっしり。午前9時には講演会がはじまって、夕方までに10個ぐらいの演題を聴く(もちろん、参加者全員が仲良く集まります)。講演は普通の研究発表もあるし、「ノーベル賞の歴史」とか「カハール大先生の御宣託について」みたいなものもある。ランチタイムにも、メシを食いながら様々な題目のポスター発表を聴きます(僕はここで自分の研究を発表しました)。気が休まるのは途中に何度か入るコーヒー・ブレイクで、それぞれちょっと散歩をしたり、気が合いそうな参加者と懇談したり。

講演会が終わると、だいたいはみんなでディナーを取ります。ここでも、スピーチやスライドショーがある。特に初日のディナーはなかなかのもので、スペイン大使館に招待されてパーティーでした。というのは、カハールがスペイン人だったからですね。スペインからTVクルーも来ていて、そこのおっさんたちも僕らと一緒に楽しんでいました。

ディナーの後も、まだまだ一日は終わりません。今度は適当なグループに分かれて、夜の街に繰り出すことになる。この時期のストックホルムは夜中までなかなか暗くならないので、けっこう元気に盛り上がります。だから、ホテルの自分の部屋で寝るとき以外は、ずっと参加者の誰かと一緒にいるわけですね。

なかなかいいものでしたよ。こういうイベントだと、みんなが割とすぐに仲良くなれるから。さらに、日本から参加したのは二人(僕と、僕の研究室のボス)だけだったので、しがらみに囚われることなく、いろいろな人たちと自由な雰囲気で話すことができました(うちのボスは「疲れた」とか言ってすぐホテルに帰っちゃうし)。僕はかなり若いほうだったので、おっさん&おばさんの集団と話すのにいささか困惑するところがないこともなかったけれど、一回慣れちゃえば、かわいがってもらえるぶん特でしたね。もちろん、数少ない若者たちとも貴重な交流をさせてもらいました。

というわけで、次の記事からは、今回の学会で出会った「人間たち」に焦点を当てて、いくつかの文章を書いてみようと思います。なかなか濃いですよ。お楽しみに。

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