May 6, 2006

50. 特集・創造する脳(『美術手帖』2006年5月号)

のっけから引用ですが、

「脳」ブームといわれている今、脳について様々なアプローチがなされている。(p11)

脳ドリル大流行のなか、様々な論者のメソッドが次々と紹介されている現在。(p88)

最近、脳ブームといいますか、医学、教育、批評と、あらゆるジャンルを「脳主義」みたいなものが席巻しつつあります。(p100・斎藤環氏の発言より)

というわけで、『美術手帖』が「創造する脳 - どうしてヒトは絵を描くのか」と題する特集を組んでいました。僕も脳の研究をしているわけだし、美術にも多少は関わりを持っているので、こういうものが出てくれば読みます。で、今日はその感想を書いてみようと思ったわけです。

とりあえずこの特集に関連する記事の著者等を挙げてみると、

  • 中沢新一(宗教学者、思想家)
  • 暮沢剛巳(美術評論家)
  • 茂木健一郎(脳科学者)
  • 佐々木里加(アーティスト)
  • 岩田誠(東京女子医科大学医学部長)
  • 藤幡正樹(アーティスト)
  • 池内克史(ロボット工学者)
  • 佐藤雅彦(東京藝術大学教授、慶應義塾大学特別招聘教授)
  • 菅俊一(慶應義塾大学佐藤雅彦研究室OB)
  • 松田行正(グラフィック・デザイナー)
  • 眞田祥一(脳神経外科医)
  • 七田眞(教育学博士)
  • 昭和40年会(アートユニット)
  • 岡崎乾二郎(美術家)
  • 斎藤環(精神分析医)

という感じで、けっこう充実していますね(肩書き等はほぼ誌面に倣いました)。

ただ、厳しい見方をすると、やはり「玉石混淆の寄せ集め」というふうにも見えます。これは、「玉」の記事と「石」の記事がある……ということも多少ありますが、むしろ個々の記事の中で波が大きいといった印象かな。たとえば、所々でいいことを書いているのに、結論が「それかよ!」みたいなものとか。まあ、これはあくまで感想であって、記事の批評が目的ではないので、どれがどうとは言いませんが。

しかしそれでも、今回の美術手帖の特集は、まだ良質なほうなのかもしれません。「それなりのお墨付きさえあれば、脳についての言及はいくらでも消費される」という流れができてしまったせいか、巷はけっこうひどいことになっている気がするので。

もちろん、中には幅広く、しかも深い造詣のもとに語られているものもあります。しかし、同時に、狭い専門領域を一歩離れると、本当にどうしようもないことしか言えない・書けない人もいる。ちょっとでも訓練すればそういうものを看破する目は容易に養えるものですが、何も知らない人たちは食わせ物に肩入れしちゃう場合もあるんでしょうね。やっぱり。

玉石混淆の中で「玉」を見出す可能性を考えると、「脳ブーム」と言われる現象をすべて否定するのも惜しいものです。しかし、発言者の身分や肩書きにまどわされず、情報を十分に吟味する姿勢が大切。

その驚異を十全に味わうためには、今の日本にあふれている「わかりやすい脳語り」を突き抜けなくては駄目である。(p38)

茂木健一郎さんが書いていたことです。「そのぐらいハードなものなんだよ」ということを認識しておくためにも、心に留めておいていいでしょう。

まあ、彼はこれをまさに「わかりやすい脳語り」といえる特集記事の中で書いちゃったわけですけどね。いや、だからこそ意味があるのかもしれませんが。

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